株式なのに元本保証 その驚きの資産運用先とは?

値動きのある株式を元本保証で発行するという発想は、これまで企業にありませんでした。しかし、その常識を覆した株式があります。それが2015年にトヨタ自動車(以下、トヨタ)が発行した「第1回AA型種類株式」です。発行価格で買い取り請求ができるため元本が保証されるうえ、優先株でありながら議決権もあることから投資家の間で話題沸騰となりました。

第1回発行分はすでに完売していますが、2020年以降に予想される第2回の発行に備えて概要やメリット、デメリットを紹介します。

「AA型種類株式」とはどんな商品?

まず、「AA型種類株式」とはどんな商品か、概要を見てみましょう。

正式名称は「トヨタ自動車株式会社第1回AA型種類株式」。トヨタが時価よりも高い価格で株式を発行する代わりに、請求があれば発行価格で買い取る事実上の元本保証株式です。5年満期で、配当金の支払いが優先される「優先株」のスタイルを取りますが、議決権が付与され、株主総会にも出席できる点に特徴があります。

配当金は普通株とは異なり、独自の基準で支払われます。2015年度は売り出し価格の0.5%、2016年度は1.0%というように毎年0.5%ずつ増配され、2019年度以降は2.5%の利回りとなります。満期が5年間に設定され、期間満了後は普通株に転換できることから「転換社債」に似た性質がある商品です。ほかに、種類株式のまま保有を続けるという選択肢もあります。

株式が元本保証なら最強の資産運用先に

株式投資のリスクが値下がりにある以上、実質的に元本が保証されるならこの株式はあらゆる金融商品の中で最強の資産運用先といえます。配当金も業績に関係なく毎年増配されるので安心感があります。いってみれば元本とともに5年連続増配も保証されるわけですから、超低金利下の現在では申し分ない条件といっていいでしょう。

しかし、このような仕組みの商品は、トヨタ銀行と呼ばれるくらい豊富な自己資金を有するトヨタだからこそできることで、追随する企業はその後出ていません。

値下がりしても購入価格で買い取ってくれる

この株式の最大の特徴は元本保証と述べましたが、デメリットもあります。発行価格がその時点での時価よりも高く設定されるため、はじめからハンデを背負うことです。第1回の発行価格は1万598円で当時の時価よりも3,000円近い高値で買うことになりました。

もちろん、いくらで買おうと購入した価格で買い取ってくれるため損はないわけですが、満期時の株価によっては普通株を時価で買っていたほうが良かったという結果にもなりかねません。その点は、値下がりしても購入価格で買い取ってくれる安心料と割り切るしかないでしょう。

値上がりしていれば、普通株に転換して利益確定も

さて、値下がりしていたら購入額で買い取ってくれるというだけなら、単なる元本保証で終わってしまいますが、この株式が有利なのは、満期の時点で値上がりしていた場合に普通株に転換できることです。損失がなく、配当金分が利益になるのに加え、値上がり益も期待できるのが大きな魅力です。

つまり、値下がりしていれば元本保証の社債として継続保有し、値上がりしていれば株式として売却するという「二刀流」の投資が可能な商品なのです。

あまりの好条件に第1回分は即日完売

問題は株式を買えるかどうかでしょう。値下がりしたら元本で返してくれ、値上がりしていたら普通株に転換して利益も得られる、そんな都合の良い商品を投資家が見逃すはずはありません。野村證券への予約申し込みが必要ですが、第1回分は初日で募集口数を上回る人気となりました。IPO(新規公開株)並みに当選が難しいのが難点です。

なお、この株式は非上場のため、市場で売買することはできません。

第2回発行に備えて資金を積み立てておこう

最後に次回発行の可能性ですが、第1回分の満期が2020年なので、第2回の発行があるとすればその後ということになります。2020年のトヨタの株価がどうなっているかは誰にもわかりませんが、100株単位の募集になるため100万円近い資金は必要になるでしょう。それなりの投資額になるため、今から発行に備えて資金を積み立てておくことをおすすめします。

トヨタが実施した前代未聞の新株発行ですが、株式投資なのに元本保証という投資家の夢を実現してくれた点で拍手を送りたい商品です。前回の株主総会での2/3の承認を必要としたことから、第2回の発行が行なわれるかどうかは不明ですが、投資家としてはぜひ実現してもらうことを期待したいものです。