クラウドファンディングの世界を大きく変えた米国のジョブズ法とは?

日本では意外と知られていないですが、実はオバマ大統領時代に施行された法律が米国における投資型クラウドファンディングの普及を促したと言われています。いったい、それはどのような法律なのでしょうか。そして、日本でも米国同様に何らかの法整備が求められているのでしょうか。

ベンチャー企業の資金調達手段にクラウドファンディングを活用

米国は言わずと知れた世界最大の金融市場ですが、投資型クラウドファンディングにおいても他の先進国をリードする地位を確立しています。その立役者は、「ジョブズ法」という法律だったと言われています。JOBS(Jumpstart Our Business Startups)Actことジョブズ法は、2012年4月5日にオバマ大統領(当時)が署名して成立しました。日本語に訳せば、「起業促進支援法」といった意味合いになります。

その名のとおり、直接の狙いはスタートアップ(ベンチャー企業)の活動をサポートすることにあります。しかしながら、情報開示義務の軽減などといった規制緩和に加えて、「インターネットを通じた新たなプラットフォームの提供で新興企業の資金調達をより円滑にする」といった方針が打ち出されていたことが、特に重要な意味を有しています。具体的には、スタートアップが投資型クラウドファンディングによって事業資金を集めることが可能となったのです。

それまでの資金調達手段は、もっぱらベンチャーキャピタル(VC)や個人のエンジェル(スタートアップ支援者)に依存していました。ただ、資金調達に成功するためには、海千山千のVCなどを感服させるプレゼンテーションに成功しなければなりません。また、それまでの米国の法律によれば、未上場企業に投資できるのは、主たる住居以外に100万ドル以上の純資産を所有している人に限られていたのです。

ところが、ジョブズ法施行後は誰でも年間1万ドル(年収もしくは保有資産が10万ドル未満の場合は純所得の10%)まで、未上場企業への投資が可能となりました。しかも、投資型クラウドファンディングならば、出資は小口単位になって一般的な投資家にも門戸が開かれます。そうなると、VCなどと比べて投資の是非の判断基準も相対的に寛大になると言えるでしょう。

つまり、スタートアップにとっては、クラウドファンディングのほうが事業資金を調達しやすいということです。

投資型クラウドファンディング普及のために日本でも法改正

しかも、クラウドファンディングはインターネット上において、オープンに情報を公開した形で出資を募ります。今までブラックボックス(非公開)の中で行われてきたスタートアップへの投資の透明性が高まるわけです。同時に、出資自体もオンライン上の手続きだけで完結し、より円滑な投資(スタートアップにとっては資金調達)が可能となります。

また、実はジョブズ法と類似の内容の法案が、VCやエンジェルなどの要望を受けて米国議会に提出されていました。下院ではEntrepreneur Access to Capital Act(H.R.2930)、上院ではDemocratizing Access to Capital Act(S.1791)という法案名で、やはりスタートアップの資金調達をより円滑にするためのものです。こうした気運が高まっていたことも援護射撃となって、ジョブズ法の比較的速やかな成立に結びついたわけです。

日本でも、金融庁に設置されている金融審議会からの報告を踏まえて、新規・成長企業へのリスクマネー供給促進を目的に、同庁は2014年5月に金融商品取引法などの改正を実施しました。その大きな目的は、投資型クラウドファンディングの浸透を図ることにあります。実際、そのころから日本でもクラウドファンディングの普及が加速しています。

規制緩和による市場のさらなる活性化に期待

こうして、内外でクラウドファンディングを活用しやすい環境が整ってきたわけですが、まだまだ改善の余地はあるようです。例えば、国内では株式投資型クラウドファンディング に対する「総額1億円、投資家1人当たり50万円を上限とする」という規制の見直しなどを求める声が強まっています。今後も何らかの規制緩和が実施される可能性もありますから、そういった動向を注意深く見守りたいところです。